東京高等裁判所 昭和30年(ラ)305号 決定
按ずるに、本件申立は要するに、本件分家は抗告人の意思によらない届出に基ずくものであるから無効であるということを前提として、これに基ずいてなされた戸籍の記載の訂正(正確には除籍簿の記載の訂正)を求めるものであるが、元来改正前の民法においては、分家は親族法相続法上身分関係その他に重要な影響をおよぼすものであり、これにより生じた各般の法律効果中には、なお引続き存続しているものも存するのであるから、法律上の家を認めなくなつた現行民法のもとにおいても、分家が無効であることを事由として除籍簿の記載の訂正を求め得ることには、もとより異論ないとしても、かかる申請は戸籍法第百十三条又は同法第百十四条に基ずいてこれをなすことは許されないところと解すべきである。蓋し同法第百十三条による戸籍訂正の申請は、その訂正事項が軽微で私法上の身分関係等に重要な影響を及ぼさない場合に限り許さるべきものであり、又同法第百十四条による訂正の申請も、その事由が親族法相続法上重要な影響をおよぼすこと本件のような場合には許されないところであるのみならず、当事者または利害関係人のすべてが右訂正に異議がないことは記録上窺い得ない。
結局抗告人としては前記事由により現在戸籍の訂正を求めるためには、同法第百十六条により確定判決を得てなすの外ないのであるが、家を認めなくなつた現行民法のもとにおいて、同条により戸籍の訂正を求めるのに、その前提として如何なる判決を得べきであるかは、大いに問題の存するところと思うけれども、本決定においては傍論であるからここには論及しない。